死後離婚
2017.10.13
ここ数年で「死後離婚」と呼ばれる事例が増加しているらしいです。死後離婚とは、配偶者の死後に配偶者の家族と縁を切ることです。手続きは“姻族関係終了届”というものを役所に提出するだけで良く、相手の家族から反対されようと関係なく手続きは進められます。一見悲しいように思える事例ですが、この背景には様々な理由があります。
一つ目が、扶養義務から逃れるために死後離婚を行う場合。民法877条によると「1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」「2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」とある。分かり易く言うと、仮にあなたの妻が亡くなったときに、妻の家族の面倒を見る義務が生じる可能性があるということです。姻族関係終了届を提出することによってこの義務を負う必要がなくなります。
二つ目に「夫の家の墓に入りたくない!」と考えている場合。夫だけならまだしも、夫の両親、祖父母、曽祖父母・・・・がお墓に入っている場合、妻からするとそのお墓には入り辛いでしょう。配偶者、ここで言うと夫の家族との関係がこじれている場合に死後離婚を行う人が多いそうです。
さらに、この姻族関係終了届を出しても戸籍の上で除籍されるわけではないので、遺族年金などはもらえます。現代でも尚、「長男の嫁なんだから」「うちに来たからには」と夫の家に妻が縛り付けられる事例は存在するはずです。そんな女性にとって死後離婚という選択は自らを解放する決定的な一手になるでしょう。
ただ、私が疑問に思うことは紙の上で縁を切ったからと言って実生活の上で縁を完全に断つことができるのかどうか。どれだけ配偶者の親族が憎いといっても、死後離婚を選択することによって亡くなった配偶者に対する罪悪感は生じるのではないでしょうか?「人を見捨てた」という意識が生まれるのではないでしょうか?相手から何かしらの連絡は来るのではないでしょうか?簡単には断ち切れない縁を整理することは、きっと大変なことだと思います。
そんなことを思ってはいますが、私は死後離婚という選択肢が世に周知されることには大賛成です。